メルマガ自体が既に終わったメディアだよね

最近、知人の某メルマガが終了すると聞きました。話題の中心がどうでも良いことに変わっていたため既に私は読んでいなかったのですが、10年以上も飽きもせず別の技術に乗り換えることもせずによく続くと、良くも悪くも感心したものです。

今時、メルマガなんて読む人いるんでしょうか? 外出中は受け身のメディアとして手軽な、メールベースのものが助かることはあります。特に、海外旅行時はWebブラウザベースのものでは通信量が多くなりすぎて課金が怖いので、テキストのみだと安心できます。しかし、それであっても今ではGoogle NewsとかYahooを、現地PCか無料Wifi使ってチラ見するようなやり方が増えてきたと思います。

テキストベースでメール配信されてくるものは扱いが楽である反面、必ずしも自分の意に沿ったものが配信されるわけではないし、今時だとメールはSPAMや通販ショップのDMが大半という人も多いのではないでしょうか。

今や私は、メールを通販・旅行予約時の情報受け取りにしか使っていないです。後は、ヤフオクとか、googleニュースのアラートとか、人との情報のやりとりよりも機械的な情報のI/O(入出力)にだけメールを使っているのです。とりあえずメールに投げておけば後で検索できるので、プライベートな情報リポジトリになっています。メールデータそのものはPCのアプリ「Becky!」で10年以上前のものから検索できますし、その前のアーカイブもテキストデータで残っています。また、gmailに送られたものであれば、オンライン上で検索をすることもできます。

そのような中、ふと見かけたこの記事が気になりました:

著者と読者を不幸にする有料メルマガという仕組み 珍しくイケダハヤト師に同情する 常見 陽平

イケダハヤト師が、「有料メルマガは儲からない:名だたる著者が死屍累々な理由を考える」(http://blogos.com/article/78218/)というエントリーを書いていた。筆者も、例によって、有料メルマガを撤退した著者の事例として登場していた。 ふと考えたのは、有料メルマガは著者も読者も不幸にするシステムではないかということだ。 (中略) 要するに、執筆するのにパワーをかけ切れなかった、会員が増えなかった(増やす努力も足りなかった)、値段分のコンテンツを作ることができなかった、ということである。だめだこりゃ。 イケダハヤト師も、自身のメルマガが今のところ苦戦中であることをカミングアウトしている。 このエントリーによると、1ヶ月630円のメルマガなのだが、定価の40%はメルマガスタンドがもっていくので、購読者1人あたりの売上は月額378円。読者が(おそらくこのエントリーが掲載された1月19日現在のもの)約80人で、80人×378円=30,240円の売上なのだそうだ。さらに、編集部を持っているそうで(過去のエントリーによると、編集者とライターが1人ずつ?)その経費が月10万円だそうだ。1ヶ月約7万円の赤字は大きい。 そもそも論で、そんなことは最初から予想がついたのでは、とか、月4本のメルマガとはいえ2人で10万円程度でサポートさせるのは搾取じゃないのかとか、よくその金額でやるなとか、私をメルマガの撤退事例としてあげるのはそろそろやめれとか、いろいろ思うところがあるのだが、どうやら儲かっていない、というか大赤字のようだ。貧弱!貧弱ゥ!

私はこういう定期的に書かされる月何回ものが苦手で、継続しないんです。定期タスクとして与えられるのではなく、適当なタイミングで書くことができるものならば良いのですが、メルマガ(メール“マガジン”)を名乗る以上は、気紛れなタイミングで書くわけにはいかないでしょう。ましてや、自分から始めたものとなると、尻を叩くのも自分自身? 無理だわーと思うのです(^_^;)

たとえ無料であっても、こういう仕事はキツイはずです。ネタを定期的に投下して読者を惹き付ける必要がありますし、やらねば存在を忘れ去られてしまうでしょう。いつ届くか分からないようなメルマガに登録する人がいるのか、そもそも定期的に届いたってちゃんと読まれているのだろうか、疑問は尽きません。 うちも業務でメルマガを担当している人がいますが、たまに原稿の依頼が課のメンバーに来ています。私も、昨年は1、2回書きました。ああいう担当者を作って何人かの持ち回りで運営していかないと、なかなかメールを出し続けるのは難しいのが現状だと思います。

有料はとんでもなくキツイはずです。上記のように、無料のチャネルで大人数のフォロワーを獲得している人ですら有料にすると大負けしてしまう状況なのですから、成功するケースはとても稀なのでしょう。有料でうまくいくケースは思いつく限りでは、

  1. 元々、有名な人が小遣い稼ぎ的にやっているもの
  2. 独自の情報に拘り、ここにしかない情報を提供しているもの

の2パターンしかありません。メルマガでよく話題になるのは1.ですが、このケースは元々売れているものを別のチャネルから動かしてきただけに過ぎません。執筆者そのものに関心があって、より個人的なことを含めて知りたい人(いわゆる信者のようなもの)に親近感を持たせて、執筆者の個人情報を切り売りしているだけです。

メルマガの理想とするところは2.だと思うのですが、うまく行っているケースをほとんど聞いたことがありません。ぱっと思いつくところは、

■田中宇の国際ニュース解説 ■MyNewsJapan

くらいでしょうか。「田中宇の国際ニュース解説」は1999年から長い間全てを無料で配信し続けて、何年か前から有料記事を書くようになったものです。田中宇氏の記事は独自性があり著書も豊富で、長期に渡ってネタが尽きることなく執筆が続けられているので、そこそこ成功しているのではないでしょうか。(実態はオープンにされてませんが・・・)

「MyNewsJapan」はメルマガではないので、成功例として挙げられそうなのは実は1件だけかも? いやー、厳しいですね。メルマガに準じそうなものとして挙げるしかありませんが、「MyNewsJapan、会員2千人に 「広告なし=タブーなし」ネット専業の調査報道ジャーナリズムを確立」にあるようにMyNewsJapanは会員2000人になったそうです。1800円×2000人/月=360万円/月の売り上げで、地味ながら着実に伸びていますよね。

他には思いつかない・・・、やはりこれがメルマガの現状だと思います。

金払ってまで見たいものって、実は大してないのかもしれません。重要なのは独自の情報を独自の観点から述べることで、上記のイケダハヤト氏の場合は、観点が面白く気づかされることもあるのですが、元となる情報は他人から拝借してきたようなものが多く、ようは「底が浅い」感じがするのです。これはネットメディア全般(さらに、それを出汁にしたビジネス書)に言えることかもしれません。

仕事でリアルとバーチャルを行ったり来たりしてる者として改めて考えさせられます。やはりリアルでの販売力を持つところは強く、ネット専業でやっていくには強い独自性と独自の観点が必要。とはいえ、実際にそこまでの力を持っている人、組織はそれほどないのかもしれませんね。